プロの仕事研究
このコンテンツは「株式会社日本ブレーンセンター」の「[en]学生の就職情報」の一部を、掲載させていただいております。
電源開発株式会社
京都大学 法学部 出身
小竹 昇 さん (39歳) / 1988年入社
火力事業部
燃料グループ
エネルギーの長期的な安定供給の確保を目指す、燃料調達のプロ
燃料部門に配属になる前は、立地環境部と発電所・立地事務所を経験。地元との厳しい交渉にあたったが、それが楽しかったというほど人と話すのが好きだ。
その経験を生かし、現在も様々な交渉にあたる。
休日には息子と戯れることでリフレッシュし、ストレスを翌週まで持ち越さないようにしている。
[プロローグ]
水・空気と同じく「あって当たり前」と思われている電気。ところが2003年の夏は、原子力発電所での不祥事をきっかけに、関東地方は深刻な電力危機に見舞われた。幸い節電や代替電源の確保などによって危機は回避できたが、今回の事態は、電力の安定供給の重要性を改めて浮き彫りにした。その電力の安定供給で大きな役割を果たしている人物の一人に、電源開発(株)[以下、J-POWER]の小竹がいる。火力発電所の燃料「石炭」の、長期的な安定供給と経済性とを両立するため、1年半もの間、炭鉱開発会社との厳しい交渉に携わり、ついに契約にこぎつけたのだ。
近年、風力などの新エネルギーが注目されているが、忘れてはならないエネルギー源に石炭がある。今回の電力危機を回避できたのも、他ならぬ石炭や石油、LNGを燃料とする火力発電所があればこそである。J-POWERが特に注力している石炭は、価格の面からも、エネルギーの安定供給の面からも優れていて、極めて重要なエネルギー源の1つである。エネルギーのベストミックスという意味でも、小竹が新たな炭鉱との長期契約に成功した意義は大きい。
ミッション「新たな炭鉱を探し出せ!」
「今契約している炭鉱は、あと10年ほどで掘り尽くされる。これに代わる炭鉱を探し出せ!」小竹が新たな燃料調達先を確保するプロジェクトのリーダーに指名されたのは、2001年10月のことであった。国内7箇所、約800万kWの石炭火力発電所を運転するJ-POWERは、日本最大の石炭(一般炭)ユーザー。このため、石炭の長期的な安定供給を確保するために、オーストラリアにある2つの炭鉱の権益を保有し、石炭を調達している。しかし、そのうちの1つは2010年頃までに掘り尽くされる見込みであり、J-POWERは、それまでに別の炭鉱の権益を確保しなければならなかった。小竹は武者震いした。駐在経験があり現地の事情に精通していることを買われての指名。「なんとしても成功させなければ」。新しいプロジェクトにチャレンジできることに、小竹は燃えていた。
プロジェクトは炭鉱探しから始まった。幸い、現在権益を保有している炭鉱の近くに、2008年の操業開始を目指している炭鉱があった。ここなら現在使っているインフラをそのまま使うことができるし、石炭の品質も問題ない。もってこいの話だった。しかし、ここからが困難の連続であった。
難航する交渉。将来を見据えて小竹は…
いかに安く権益を取得するか。そしてそこからいかに安く石炭を調達するか。この2点でこのプロジェクトの成否が決まる。この炭鉱の開発は、操業開始から20年近く生産を続ける計画で進められていた。「ここで負けたら、20年間負け続けることになる」。契約条件の交渉に際し、小竹は自らの主張を繰り返した。石炭の購入価格…それはJ-POWERが販売する電力料金に反映される。電力自由化で競争が激しさを増すこれからのエネルギー業界において、電力料金は会社の死活問題に直結する。小竹の肩には会社の将来ものしかかっていたのだ。しかし、有利な条件で契約したいのは相手方にとっても同じこと。交渉は平行線をたどる。
「どこかに妥協点はないか…」。小竹は考えた。「このプロジェクトの目的は、燃料の長期的な安定供給と経済性とを両立させた上での利益追求。石炭の安ささえ確保できれば、投資リターンは多くを求めなくても良い」。
そこで小竹は、権益取得のための契約条件では相手に一部譲歩する代わりに、長期的に安く石炭を購入するような条件を提示した。膠着状態が長く続く交渉であったが、双方にメリットがあることを確認することで、再び交渉は進み始めた。
もう1つの難関。「見解の相違の溝を埋めなければ」
「どうして長期契約が必要なのか」。交渉を進める小竹に対して、社内から様々な反対意見が出された。これまでの長期契約は、安定供給は確保できる反面、価格は短期契約より割高になっていたからだ。相手方との厳しい交渉をよそに、社内でのコンセンサスをとることが新たな難関として浮かんできた。「どうして俺の言うことが分からないんだ」。小竹はしばらく悩んだ。ある時、他の部署の同僚たちと杯を交わしたとき、小竹は同僚からの助言で初めてどこに問題があったのか気づいた。長期契約においては、供給の安定性と柔軟性を担保するため、短期契約より価格が割高になるのが石炭マーケットでの常識。しかし、一般的な商品においては、取引量が多くなれば価格は安くなるのが当たり前。他の部署との見解の違いは、この違いから来ていたのだった。
後日会議の席。小竹は改めてこの契約の重要性を説明した。燃料の安定供給確保の重要性、長期契約と短期契約との前提条件の違い、様々なリスクを補って余りあるリターンが見込まれること、そして特に今回の契約ではこれまでの長期契約と比較して安い価格で燃料を購入できること…。会議を重ねて行く過程で、小竹は徐々に信頼を勝ちとっていった。反対意見を出していた者も全員が小竹の意見に納得し、J-POWERは炭鉱との契約に乗り出すことを決定した。
多くの障害を乗り越え、小竹が得たものは
「10年後、20年後でもメリットを享受できる契約ができた」と小竹は振り返る。これまでの長期契約でのデメリットであった価格面での問題点を克服し、燃料調達の長期的な安定供給と経済性との両立を実現させたことは、小竹にとって大きな自信につながった。苦難の末に得た成功。小竹は再び同僚たちと、今度は祝杯を交わした。プロジェクトの成功要因は、まさに「プロジェクトメンバー全員の努力」であった。その中で、1年半の長期にわたって粘り強く交渉を重ねてきた小竹の貢献は、高く評価された。初めて挑んだ権益取得プロジェクトのチームリーダー。主体的に実行してきたことで、小竹は“燃料調達のプロ”として大きな成長を遂げたのであった。
エピローグ
現在、小竹は別のプロジェクトと共に、アジアでの石炭のトレーディング事業に取り組んでいる。石炭のトレーディングは、ヨーロッパでは既に行われているが、アジアではこのようなビジネス自体がまだ存在しない。「経済発展を続けるアジアでは、安価なエネルギー源「石炭」の需要は今後も伸び続ける。アジアを相手にトレーディング事業を行えるはずだ」。資源ビジネスのフィールドが、小竹の手によってさらに広がりつつある。
Flash Back 〜仕事で活かした学生時代の経験〜
電源開発(株)に就職した1988年は、バブル経済が末期の一花を咲かせていた。当時最も人気が高かった金融・証券業界からも引く手あまただったが、電源開発(株)に就職。「モノを作る、発電所を作って動かしていくことに魅力を感じた」からだ。それが1年半の長期にわたる粘り強い交渉の原動力にもなった。
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